リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン (Vol.1)

リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン (Vol.1) (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン (Vol.1) (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

 映画「リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた闘い [DVD]」の原作。
 イギリス古典的名作小説の主人公達が1898年の架空のヴィクトリア朝イギリスを舞台に繰り広げる怪奇冒険活劇。メンバーは「ソロモン王の洞窟 (創元推理文庫 518-1)」のアラン・クォーターメイン、「吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫)」のウィルヘルミナ・マリー、「海底二万里 (創元SF文庫)」のネモ船長、「透明人間 [完訳版] (偕成社文庫)」の透明人間、「ジキル博士とハイド氏 (創元推理文庫)」のジキル&ハイドの五人。

 ストーリーや活劇はアメコミらしく捻りの無い力技で解決されていて正直つまらないんですが、作者の豊富な知識を使ったイギリス小説のクロスオーバーぶりが面白い。セリフや小道具のひとつひとつに密度の濃いブラックユーモアが盛り込まれ、作者アラン・ムーアのこだわりが伺えますわ。元ネタには冒険小説、探偵小説だけでなく端々に艶聞小説までクロスオーバーさせるあたり、映画には出せない毒が詰まりまくりです。「ルパン三世」のアニメ版と原作くらい雰囲気が違うので、映画版「リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた闘い [DVD]」が好きな人はご注意だ!

 原作は主要キャラもみな性格病んでる犯罪者ばかりだし。先ずアラン・クォーターは阿片中毒者。彼が何故阿片に溺れていたかは本編マンガの後についている前日譚の小説にて明かされます。その内容はなんと「火星のプリンセス―合本版・火星シリーズ〈第1集〉 (創元SF文庫)」シリーズとクトゥルー宇宙のクロスオーバー。(笑)

 んで透明人間はレイプ犯。昔アニメ化されてた*1ポリアンナが被害者の女生徒(しかも入っているのが娼館まがいの「驕慢婦女子矯正寄宿学院」)としてワンシーンだけ登場します。助けられた直後に「あたし、大丈夫です! 悪魔にひどい事をされたけれど、それでも“よかった”を探す事にします!」「まあポリアンナ、なんて気丈な子でしょう!」と前向きに立ち直るあたりは、さすがポリアンナ。あと「少女レベッカ (ポプラ社文庫 C 7)」のベッキーも同じく女生徒として、透明人間に妊娠させられて登場。児童文学キャラばかり狙って、ロリコンなのか透明人間。次巻ではほかのイギリス文学出身の世界名作劇場キャラが狙われてたり。アンネットとかセーラとかジャッキーとかネロとかセディとか。いやネロとセディは男子だけど、そんなこと気休めにもならねえ。

 主役のミナは性格がキツイだけでこの中ではまともかも。この巻では素性も隠されたまま。ずっと首を隠しているのでおそらく吸血鬼なんだろうけれど、冒頭で陽の下に出てもいたりして?

 巻末に元ネタ作品への注釈が細かくついているので、イギリス小説をほとんど知らない自分でもついていけました。元ネタ作品を一応ネット検索にかけてみたところやっぱ邦訳されていない本が多い。されていても出版されたのが戦前で、内容どころか出版記録も定かに残っていなかったり。

 次巻では伏線を張ってた火星人との戦争、ウェルズの「宇宙戦争」とのクロスオーバーをやる様子。すごい楽しみ。