念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿

念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

念力密室!―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)

売れない作家・保科匡緒(ほしなまさお)のマンションで起こった密室殺人。そこに登場する“チョーモンイン(見習)”神麻嗣子(かんおみつぎこ)。美貌の能解(のけ)警部……。「神麻嗣子の超能力事件簿」の最初の事件である表題作をはじめ、“密室”をテーマにした6作品を収録!奇想天外の連続に驚き続けること確実な、シリーズ初の連作短編集。

 超能力を使った密室殺人の短編集。用いられる超能力は、このシリーズの長編ものに出てくるような風変わりかつ大掛かりなものではなく、サイコキネシスで部屋のカギを開け閉めするだけ。しかもサイコキネシスが使われた回数と場所まで解っているので、推理の主眼は巻末の解説に書かれている通り「どうして密室が作られたか?」の解明。だからロジック自体は普通の推理ものとさして変わりありません。やろうと思えば、超能力を出さずとも書けたんじゃないかとも思えるくらい。でもライトノベラーでエロゲーマーな自分としてはやっぱ超能力とか平行世界とか変な設定を追加された推理ものの方が興味をひかれますのよ。


 前作の長編「幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)」「実況中死―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)」を読んだときから神麻さんは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックスが過去の世界で自分の両親をくっつけようとする姿を髣髴とさせるなあと思っていたけど、その可能性についてこの巻であっさりほのめかされてます。神麻さんの正体にはまた別の真相があるのか、それとも正体の解明自体はこのシリーズにおいて一通過点にすぎないのか。


 短編集の中では「死体はベランダに遭難する」「乳児の告発」がラストのヒネリが効いていて面白かったです。西澤保彦の長編特有の水増し部分がない分、事件・捜査に無駄がなく、完成度が高いですわ。萌えも自分にはこれくらいがちょうどいい感じです。